不眠症・生理不順を伴う眩暈

平成22年の猛暑がおさまり始めた9月中旬。
なぜか、眩暈(めまい)や、頭のモヤモヤ感を訴える方が多く相談に訪れている。

夏風邪をこじらせて発症された方、メニエル氏病の方、発症のきっかけは様々だが、眩暈の患者さんがとにかく多い。

大半の患者さんは「苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)証」のタイプである。
苓桂朮甘湯証とは、苓桂朮甘湯という漢方薬の適応症を意味する。

今日、訪れた女性の方(Aさん)もそうだった。
生理不順と、不眠症の漢方治療を継続中のAさん。
経過は至って良好だった。
心療内科の睡眠導入剤も不要になり、ぐっすり眠れるようになっていた。

しかし、9月初旬に回転性の眩暈を発症してから、眠れなくなった。
就寝して眠りに入るが、午前2時に一度醒めると 二度寝ができない。
そのまま朝を迎えるという。

「横になっていると、身体が後ろに引かれる感じがする・・・」
「落ち着かない・・・」
「頭がモヤモヤする」
「時々、お腹が張って痛くなる」

と、Aさんは症状を語られた。

問診の後、糸練功(しれんこう)にて、自律神経および眩暈の反応穴を、確認・解析する。
(糸練功の詳細は、「糸練功に関する学会報告」を参照されたい)

解析結果は・・・

● 苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)証
● 四逆散(しぎゃくさん)証

2つの証が、極めて低い合数で確認された。
“○○証”の表現は、○○という漢方薬に適応する病態(治療ポイント)である。
つまり、この方の症状は、上記の処方により、根治可能を意味する。

苓桂朮甘湯証の患者さんは、Aさんで9月に入って20人目。

現在、治療中の漢方薬と平行して苓桂朮甘湯と四逆散を服用していただく。

翌日
彼女からの連絡。
「昨夜は良く眠れました。めまいも軽くなってます。よかったです♪」
とのこと。

以降、眩暈、不眠症、生理不順、すべて順調に改善中である。


糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します


実践漢方のコメント

「不眠症をともなう眩暈」の漢方治療による一例です。

Aさんは当初、柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)という処方だけで、睡眠導入剤が不要になりました。

しかし、人はさまざまな環境変動の中で生かされています。
時に、変動に順応できず、新たな適応症を発生させることもあります。

不眠症が改善しているにも関わらず、
「二度寝ができなくなる」
「回転性の眩暈がする」
という状態は、「他に治療を要する病態(治療ポイント)の存在」を推測させます。
つまり、他の漢方薬の適応が、患者さんに生じたことを意味します。

実際、糸練功を使って自律神経の反応穴(五志の憂:ごしのゆう)を分析すると、

●苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)証
●四逆散(しぎゃくさん)証

という、今までになかった、新たな適応が解析されました。

・・・証(しょう)とは、・・・の漢方薬が適応する病態です。
・・・の漢方薬で治せるお病気のことです。

つまり、相談の過程で、適合処方を知ることになります。

適合処方が解れば、後は漢方薬を服用するだけ・・・。
自然治癒力が目覚め、患者さんご自身の細胞が自己修復を始めます。

現実に、患者さんが治っている事実は、漢方薬が適合していることの証明でもあります。

「患者さんと、漢方薬の適合性を見極めた漢方治療」
糸練功は、それを実践するための技術です。

糸練功の理論を構築され、御教授いただいた 木下順一朗先生(福岡県・太陽堂漢薬局)へ感謝の念に堪えません。


治療に要した漢方薬と費用

漢方薬漢方薬の種類料金(30日分)
苓桂朮甘湯散剤9,000円
(税別)
四逆散散剤12,000円
(税別)

※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります