膀胱子宮内膜症(排尿痛と月経痛)

40歳代(女性)、平成19年3月に初来局。

普段より、月経痛は軽い方ではなかった。
そしてご婦人は、次第に月経時の排尿痛を強く感じるようになられた。

病院では「子宮内膜症(しきゅうないまくしょう)」と診断され、通院されていた。
が、月経時の下腹部痛、排尿痛は甚だしく、強度の頻尿と残尿感も憎悪する傾向にあられた。

鎮痛剤も効果がなく、外科手術を受けたが改善はされず。
悪性腫瘍の疑いも指摘され、御婦人と御家族の心情は尋常ではなかったようである。

特に、担当者の対応に、忘却しがたい不信の念を感じておられた。

その後、転院され 偽閉経療法等のホルモン療法を薦められるも、できれば漢方療法で対応したい旨を伝え、延期されていた。

一連の問診の後、月経痛の反応穴(はんのうけつ)と膀胱部(離した状態で)を、糸練功(しれんこう)にて確認・分析する。


糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します


治療経過

0ヵ月後
月経痛の反応穴、膀胱部の反応

0.3合臓腑病陽証甲字湯加黄ゴン
0合臓腑病陰証清心蓮子飲

症状
月経痛(激しい)、月経時の排尿痛(激しい)、頻尿・残尿感(強い)
月経時の下腹部痛は甚だしく、膀胱炎様症状(排尿痛・頻尿・残尿感)も強度


1ヵ月後
月経痛の反応穴、膀胱部の反応

1.5合臓腑病陽証甲字湯加黄ゴン
1.0合臓腑病陰証清心蓮子飲

症状
月経痛(軽度)、月経時の排尿痛(軽度)、頻尿・残尿感(軽度)
月経時は軽度(改善)、膀胱炎様症状(排尿痛・頻尿・残尿感)も改善中


10ヵ月後
月経痛の反応穴、膀胱部の反応

7.0合臓腑病陽証甲字湯加黄ゴン
9.0合臓腑病陰証清心蓮子飲

症状
月経痛(消失)、月経時の排尿痛(消失)、頻尿・残尿感(消失)
全症状は完全消失。
病院にて検査 → 「異常なし」と診断される

その後、自ら漢方治療を終了した模様


結語

膀胱子宮内膜症における月経痛・膀胱炎様症状への改善例です。

一般的な、膀胱炎の症状は 排尿痛・残尿感で、「猪苓湯(ちょれいとう)」と呼ばれる薬方が汎用されます。

しかし、ここに掲載する症状は、「月経期間だけに生じる膀胱炎症状」です。
実際に、本症例の患者さんが猪苓湯を服用しても治りません。

さて、患者さんの子宮内膜症による月経痛、膀胱炎様症状(排尿痛・残尿感・頻尿)には、
1.「甲字湯加黄ゴン(こうじとうかおうごん)」
2.「清心蓮子飲(せいしんれんしいん)」
の、2つの漢方薬が著効しています。

一見、簡単な漢方治療と感じるやも知れません・・・。
ですが、我々は闇雲に漢方薬を選んでいません。

通常の医療現場では、効きそうな薬を服用して、効けば OK!
効かなかったら、別の候補薬を選びますね。

これが、漢方治療ではもっと複雑になります。
なぜなら、漢方薬は 患者さんに適合させて効かせます。
適合しない漢方薬は、全く効きません。
漢方治療の命は、患者さんと薬の適合性を見抜くことなのです。

どのように適合性を見極めるか・・・
その方法として、当薬局は 糸練功(しれんこう)という技術を応用しています。

このケースでは、膀胱と一定のツボ(反応穴)に磁場の乱れ(情報)が生じています。
その情報を分析し、適合処方を誘導する技術が糸練功です。

薬を服用せずに、薬の適・不適を識別する方法です。
患者さんの臓腑・經絡の状態を分析し、薬の検体を生体へ近づけて、磁場の変化を確認します。
(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」をどうぞ)

そして、
1.甲字湯加黄ゴン(こうじとうかおうごん)証
2.清心蓮子飲(せいしんれんしいん)証
の、適応を割り出しました。

・・・証(しょう)とは、
・・・の漢方薬が適応する治療ポイントを示します。
・・・の漢方薬で治せるお病気のことです。

つまり、相談の過程で「患者さんの症状は、甲字湯加黄ゴンと、清心蓮子飲 で治せる確証」が得られたことになります。

(2つの漢方薬の目的を 簡単に記します)
1.甲字湯加黄ゴン(こうじとうかおうごん)
→ 血滞(けったい):血液の循環障害を改善する薬方

2.清心蓮子飲(せいしんれんしいん)証
→ 自律神経症状や、心因性の排尿障害を改善する薬方

患者さんの症状を、漢方的に分析すると、
→ 血行障害と、自律神経の働きの乱れ が由来していると、解釈できます。

この検証方法は、実に画期的です。
なぜなら、薬を服用する以前に有効な漢方薬が判ります。
ですから、無駄な治療・無駄な時間・無駄な薬代を省けるのです。

適合処方が解れば、後は漢方薬を服用するだけ・・・。
自然治癒力がめざめ、患者さん御自身の細胞が自己修復を始めます。

現実に、患者さんが治っている事実は 漢方薬が適合していることの証明でもあります。

「患者さんと漢方薬の適合性を見極めた漢方治療」
糸練功は、それを実践するための技術です。

糸練功の理論を構築され、御教授いただいた 木下順一朗先生(福岡県・太陽堂漢薬局)へ感謝の念に堪えません。


必要となった漢方薬の料金

漢方薬漢方薬の種類料金(30日分)
甲字湯加黄ゴン散薬12,000円
(税別)
清心蓮子飲散薬12,000円
(税別)

※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります