回転性眩暈(めまい)

20歳代、男性。

平成23年4月 初来局。

3ヶ月前より、耳閉感(耳のふさがった感じ)が出現。
その後、男性は回転性の眩暈(めまい)も併発されていた。

まるで背後から、頭を後ろへ引かれているような感覚で、たえず頭が絞めつけられているような頭重感。

仰向けの状態では、天井が回っていて眠ることすらできないといわれる。
少し動くだけでも、動悸がする。
外出時には、目がくらみ 開眼しているのがお辛いと訴えられていた。

憔悴された表情に、症状の深刻さを察した。

問診の後、糸練功(しれんこう)にて、眩暈の反応穴(はんのうけつ)を分析。


糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します


治療経過

0ヵ月後
眩暈(めまい)の反応

-0.7合臓腑病陽証苓桂朮甘湯加澤瀉
0.6合臓腑病陽証抑肝散

症状
眩暈(激しい)、不眠(強い)、耳閉感(強い)
強度な回転性眩暈のため、睡眠障害をきたす


2ヵ月後
眩暈(めまい)の反応

2.7合臓腑病陽証苓桂朮甘湯加澤瀉
4.3合臓腑病陽証抑肝散

症状
眩暈(ほとんど感じない)、不眠(消失)、耳閉感(消失)
疲労時に軽度な眩暈を感ずるが、生活には支障はなし

現在も、漢方治療を継続中


結語

当初の回転性眩暈(めまい)は、相当お辛かったことと察します。

経験的に、-0.7合の苓桂朮甘湯加澤瀉(りょうけいじゅつかんとうかたくしゃ)証は、「慢性的な船酔いの状態」の如く、フラフラの状態です。

にもかかわらず、一時間以上 電車にゆられ御来談されるのは、かなりのご覚悟を要したことと存じます。

眩暈(めまい)は、三半規管の異常と関係深いことを御存知ですね。
三半規管へ影響を及ぼす要因はさまざまですが、ストレスの関与も否定できません。

現に、本症例の解析結果は、
1.苓桂朮甘湯加澤瀉(りょうけいじゅつかんとうかたくしゃ)証
2.抑肝散(よくかんさん)証
の、2つです。

この2つは、「心の不調」と深い関係があります。

特に、2.の「抑肝散(よくかんさん)証」は イライラ・怒りによって悪化します。
漢方薬で治せる適応ですが、ご自身の考え方が、改善の仕方に大きく影響します。

漢方治療中であっても、イラついたり、怒鳴れば治りにくくなります。
治りたかったら、「怒ることは損」であることを意識します。
患者さんは、「怒らない」ことを実践しているようです。

それは、抑肝散証の改善スピードを見てわかります。
2ヶ月で 3.7合(0.6合→ 4.3合)の劇的な改善です。
(良好な治り方でも 2ヶ月に 2.0合の上昇が一般的です)

治療開始から2ヶ月あまり。
強烈な回転性眩暈(めまい)も落ち着き、生活には支障のないレベルに改善しています。

漢方薬は 患者さんに適合して 効果を発揮します。
適合しない漢方薬は効きません。
効く漢方薬とは、適合性を見極めた漢方薬のことです。

いかに適合性を見極めるか・・・

その適合性の見極めに、糸練功という技術は、とても有用です。
(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」をどうぞ)

糸練功の理論を構築され、御教授いただいた 木下順一朗先生(福岡県・太陽堂漢薬局)へ感謝の念に堪えません。


必要となった漢方薬の料金

漢方薬漢方薬の種類料金(30日分)
苓桂朮甘湯加澤瀉散剤12,000円
(税別)
抑肝散散剤12,000円
(税別)

※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります