慢性副鼻腔炎 (頑固な鼻づまり) 70歳代 女性

平成17年6月 初来局。

平成16年秋より、強度の鼻づまりを発症される。
鼻水は少なめ、鼻閉が甚だしく、呼吸は 口呼吸のみ。

耳鼻科にて慢性副鼻腔炎(蓄膿症)と診断される。

問診の後、顔面より 上下の副鼻腔の反応を糸練功(しれんこう)にて分析。

(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」を参照されたい)


糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します


治療経過

0ヵ月後
上下の副鼻腔の反応

副鼻腔0合臓腑病陽証荊芥連翹湯加辛夷

症状
鼻閉(激しい)


7ヵ月後
上下の副鼻腔の反応

副鼻腔6.0合臓腑病陽証荊芥連翹湯加辛夷

症状
鼻閉(消失)

この後、御自身で漢方治療を終了した模様。


結語

完全治癒の段階ではないのですが、鼻のとおりが良くなり御自身の判断で治療を止められたようです。

慢性副鼻腔炎(蓄膿症)の漢方治療では、糸練功の合数(ごうすう)が 5.0合を超えると、鼻のとおりは すっかり良くなり、「治った」と錯覚する方もおられます。

しかし、その段階で勝手に治療を止めてはいけません。
漢方治療を卒業するのは、10.0合 で安定した時です。
それまでは、完全治癒への道半ばの段階で、中途の服薬中止は、再発のリスクを高めます。

さて、このケースは発症から何年も経過していなかったおかげで、治療ポイントは 1つだけでした。

慢性副鼻腔炎(蓄膿症)の場合、アレルギー性鼻炎を併発していることも多いのですが、幸運なことにその反応もなく、1種の漢方薬で治療可能なケースでした。

糸練功によって解析された適合処方は、 荊芥連翹湯加辛夷(けいがいれんぎょうとうかしんい)

副鼻腔炎に汎用される「荊芥連翹湯」に辛夷(しんい)という生薬を加えた薬方です。

興味深いことに、このケースの糸練功の検証において、単なる「荊芥連翹湯」だけでは患者さんの蓄膿症(ちくのうしょう)の異常反応が消失しませんでした。

そのことは、
「辛夷抜きの荊芥連翹湯では、この患者さんの蓄膿症は治せない」
ことを意味します。

たった1つの辛夷を加えるか否かで 漢方薬の効き目は 180度 変わります。

患者さんの微妙な生体反応を、糸練功によって見極める。
そうすることで、正確な漢方治療が可能となります。

糸練功の理論を構築された木下順一朗先生へ、ただただ感謝です。


必要となった漢方薬の料金

漢方薬漢方薬の種類料金(30日分)
荊芥連翹湯加辛夷煎じ薬+散剤14,000円
(税別)

※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります