花粉症と漢方薬

小青竜湯(しょうせいりゅうとう)が効かない花粉症

花粉症の季節になると、メモ書き片手に、
「小青竜湯って花粉症に効くんですよね?」という訪問者が増えます。

マスコミの影響でしょう…。
これは、貴重な天然資源の浪費です!
「もう、やめてくれ!」 と思います。

漢方の世界には、「花粉症=小青竜湯」という方程式はありません。

たしかに、小青竜湯が花粉症(アレルギー性鼻炎)に有効な人もいます。
しかし、全ての患者さんには該当しません。

漢方では、小青竜湯が有効なケースを、「小青竜湯証(しょう)」と表現します。
小青竜湯証の方には、小青竜湯が効きます。
しかし、小青竜湯加石膏(せっこう)証の人には、小青竜湯はほとんど効きません。

花粉症であっても、患者さん一人ひとり適合する漢方薬は違うのです。
麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)証の方、
葛根湯(かっこんとう)証の方、
苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)証の方
…まだまだあります

花粉症でも適合処方の見分けは複雑なのです。

実際、近年の花粉症では「小青竜湯証」の患者さんは減少しています。
いわゆる小青竜湯が効かない鼻炎です。

個々の患者さんに適合する漢方薬は何か?
証は何か?

漢方では、この「証を見極める」プロセスが命です。
病態を漢方的に分析し、有効な処方(漢方薬)を探し出す過程です。

ご自身から症状を伺い、顔色、舌の状態、鼻水の形状や色…。
諸々の情報から証を分析します。

これは「薬が効く確証を得るため」の作業で、時間を要します。
”立ち話”程度の情報で、漢方薬は決定できないのです。

ですから、「漢方薬専門の病院・薬局」の多くは「予約制」です。

花粉症で「小青竜湯」が効かなかった方へ。
漢方薬が効かないのではありません。
小青竜湯が悪者なのではありません。

ただ確実なのは、「その時の病態は小青竜湯証ではなかった」ことです。

花粉症といえど、適合処方の見極めは、決して容易ではないのです。

安易に漢方薬を選んでいませんか?